さとうのちんたらブログ

刀剣乱舞が好き。2次にも2.5次にも3次にも推しがいる。本丸と現実の狭間をウロウロしている。

名を呼ぶ ~鶴丸国永の独白~

 


俺たちは審神者の名を知らない。

 

 

審神者は自分のことを「審神者」と言うし、こんのすけも教えてはくれなかった。
どうやら、そういうことになっているらしい。

 

本丸名が「さとう本丸」だから、さとう何某なんだろうなとは思っているが、
本当のところは誰も知らない。

 

各々、主や大将などとさまざまな呼び方で審神者のことを呼んでおり、
それが審神者のあだ名のように定着している。

生活や運営に支障はないし、特に誰も気に留めていないようだ。

 

 

ただ、ふと名を知りたくなる時がある。
鶴丸、と俺の名を呼ぶきみを見ていると。

 

俺には鶴丸国永という名前があり、気安く呼んでもらうことも割と気に入っている。
 

だが、名は呪いでもある。

人間である審神者が、付喪神の俺たちに名前を明かさない決まりとなっていることは、なんとなく理解できる。

 

だが、名は祝福でもある。

きみをきみたらしめる名を、誰からも呼ばれないことを、きみは淋しく思わないのか? 
じゃあ、何がきみをここにつなぎとめてくれるんだ?

 


なあ、きみ。名を教えてくれるか?
未だに聞くことはできていない。

こんなに近くにいながらも、その一歩を踏み込めてはいないのだ。

 

俺は、きみの名を知らないことを、淋しい気がしているんだぜ。

 

 

 
などと縁側でつらつらと考えていたら、客だ。

庭に時々来るのら猫だ。
貞坊と、随分と可愛らしい名前を勝手につけた猫だ。

 

 

俺は手招きをして、猫の名を呼んだ。